この3年半…
以前、私は図書館の仕事をしていた。
目録をとるカタロガーという仕事。
基本、本のデータを作るのが仕事で、単純作業とも言える。
ただ、使われている言語だとか、形態が特殊であったりすると、
やはりそれなりに経験だとか、知識を要することがある。
私はこの仕事を約10年やっていた。
途中、出産・育児でブランクがあったものの、
教えて頂いた先生方、上司に恵まれ、再就職も叶った。
少しずつ難度の高い仕事に挑み、その度、自分も成長出来た。
ただ・・・時代がその挑戦を阻んだ。
組織は入札に負け、それと同時に私は図書館での仕事から離れた。
同じ職場の別の部署に異動したのは3年半前。
不慣れな仕事にかなり悩んだ。
自分の無知も思い知らされた。
全く隔離された職場に息苦しさも感じた・・・。
でも、自分ひとりの生活ではないため、我慢することしか選択の余地がなかった。
馴染んだ振りをしてみても、体は絶えず叫び声を上げていた。
そして心の中でも、次第次第に悲鳴が聞こえてくるようになった。
苦難を乗り越えることで得られた自信は何処へいったの?
自分の天職だと思っていたんじゃないの?
何のために親元を離れて、寂しくて貧しい思いして頑張ったの?
そして・・・ 自分、本が好きなんじゃないの?
そうだ・・・私は本が好きなんだ。愛して已まないのだ。
紙の手触りも、装丁の美しさも、インクの香りも、活字の整然さも、全て好きなのだ・・・
寂しくて辛くて、弱音を吐きたくて、
山と積まれた本の倉庫で独りうずくまった事があった。
自分を奮い立たせるため、埃まみれの古書の書棚に仁王立ちした事があった。
仕事の疲れを癒すために、好きな分野の書棚で時間を過ごした事があった。
辛いとき、私の傍には本があった。
もう一度、図書館で仕事したい。
もう一度、本と向かい合って仕事がしたい。
そしてまた、自分が何をすべきなのか、考え直したい。
この3年半の間に失ったものを、取り戻しに行きたい。