活字好きの本のお話

図書館や大好きな本の話、読んだ本の感想など、駄文で綴ってまいります。

自分の幼い頃はどうだった?

私の好きな作家の1人、ここでも以前にご紹介しましたイアン・マキューアン
彼の児童書というのか、大人のための児童書ともいえるこちら。


夢みるピーターの七つの冒険

夢みるピーターの七つの冒険


『夢みるピーター七つの冒険』、先日読了致しました。
夢見ることが大好きな主人公ピーターが、
頭の中で思いめぐらした素敵なお話7編が収められています。
夢、だから、突拍子もないシチュエーションもあり、
子どもらしい視点から広がる世界もあり、
そしてその視点ゆえ、大人として凄く驚かされたり。
猫や赤ん坊や大人に変身したり、人形の襲撃にあったり、とまぁ、
子どもってこんなに色々と考えているもんだろうか?と思えるほど、
多種多様なお話で、大人が読んでも実に楽しい1冊でした。


自分自身も、幼いころ、色んな事をぼんやりと考え、
すっかり夢見心地…なんてことは少なからず、いえいえ、結構ありました。
裏庭をウロウロとしながら、学校から帰る道すがら、
校庭のブランコを漕ぎながら、畦道をテクテクと歩きながら…
鼻歌なんて歌いながら思いつくことは、自分が大人になったときのこと、
ちょっとヒロインっぽく設定してみたり、すごい天才になってみたり、
あり得ない話を勝手に頭の中で作り上げて、
それがなんか現実と混濁して、訳分からなくなり、
何となく自信がついてたり、肩で風切って帰宅してみたり。
今から考えると、赤面してしまいそうなお話…
でも、今は決して作ることのできないような、夢にあふれたお話。


大人になるってことは、現実を現実として受け止めるようになること、
夢はそれほど沢山持てないと知ってしまうこと、
厳しい局面にも逃げたりせず、着実に進むだけの知恵と力を備えることなのかな?
自分がちゃんと大人になっているか、なりきれているかは疑問ですが、
小さい頃のように、夢のような話に沈溺することはなくなりました、確実に。
というか、夢を抱く時間を手放してしまった気もします。


作家、という仕事は、ある意味、幼少の頃の夢のようなお話作りの延長といいましょうか、
勿論、技術や知識は必要ですが、基本的に思い描く幻想の世界を文章にするお仕事です。
その点、幼い頃の気持ちを忘れぬままでいるんじゃないか、って思います。
ただ、想像力の逞しさは、やっぱり子どもに敵わないもんです。
だからこそ、作家業は悩める仕事なんじゃないでしょうかねぇ。


我が子もぼんやりしてること、すごく多いんですけど、
この本を読んで、少し見方が変わった気がします。
今しか出来ない、今しか作り上げられない想像の世界を、
しっかり楽しませてやりなさい、そう大人に語りかける、
大人にとって大事な1冊だと思います。