活字好きの本のお話

図書館や大好きな本の話、読んだ本の感想など、駄文で綴ってまいります。

病める時代


とある友人の話を切っ掛けにして、
”モラル・ハラスメント”という言葉を知ったのが数年前。
生半可な気持ちや知識で、
その友人の相談に乗りたくないと思い、
書店をうろつき回って手にしたのが、
紀伊國屋書店刊の
『モラル・ハラスメント/人を傷つけずにはいられない』


その当時は、モラハラに関する情報は今以上に乏しく、
各書店でも、扱って居る所はとても少ないうえに、
分類としてもかなり難しく、探す方は大変でした。


メンタルなのか、ビジネスなのか、人間関係か…


どのカテゴリーにも食い込む、厄介なテーマではあると思います。
偶然手にした上記の本ですが、モラハラの書籍の中では、
この本は、ある意味パイオニア的存在のものです。
著者でもある精神科医・マリー=フランス・イルゴイエンヌが、
犯罪被害者学を学んだのをきっかけに、
モラハラに関し研究を深め、それをまとめた1冊というものです。


他にもモラハラに関する書籍、沢山読ませて頂きましたが、
上記のイルゴイエンヌ女史のこの書籍は、
枝分かれしていく各種ハラスメント、
セクハラ、パワハラ、アルハラアカハラなどの中軸を担う、
”モラルが嫌がらせによって犯される行為”=モラハラを、
しっかりと定義づけ、色んな例を挙げて分かり易く説明しています。


これだけに限らず、他の同内容の書籍、
そうですね、およそ10冊読ませていただいて思った事は…

ハラスメントは、何処にでもゴロゴロと転がっている…
善悪の基準が曖昧になって、それをちゃんと認識している人が少ない。
信念を持つ事が、返って心にプレッシャーを与える社会がある…


近頃、モンスター・ペアレンツって話題になっていますけれど、
彼等の主義・主張も、ある意味、精神面での屈折によるものと思います。
常識のない人、と思えば常識とは何かを教えればいい。
しかし、それを飲み込めない、理解したくないという屈折があるから、
平気で自分に都合のよい理由を作って、自分を納得させてしまいます。
そして彼等の起こす行動が、教師や周辺の人々にとっては、
ストレスやハラスメントに繋がっていくんだと、私は思うのです。


ハラスメントと用語をつかうとリアリティに欠けてしまいがちです。
しかし、いじめや嫌がらせ、と書き換えれば、
そういうケースは、意外と身近に感じる事は多いはずです。
そして、それが現代社会の大きな問題になっていることは、
勿論、みんなよく知っていることです…。


モラハラとは何なのか、加害者そして被害者の心理、
解決方法はあるのか・・・などなど、
イルゴイエンヌ女史の著書で知る事が出来ます。
勿論、彼女の本から学んだ事から、
更に詳細の部分、各種ハラスメントへと関心を深めていく事も大切です。


今の社会が抱える色んな問題、そこから生まれる歪み、
心のバランスが崩れ、色んな所で病んだ人が増えています。
心の病は他人事ではありません…
うつを「風邪だ」と言った人がいるようですが、
これもなまじっか間違いではない気がします。
風邪は万病の始まり、と考えれば、
この現代に、この病気が広がりを見せるのも理解できます。
うつだけに限らず、心の病は本当に身近な問題です。、
もっともっと理解を示したり、知識を深めていく事は、
同じこの『病める時代』に生きるものとしての課題だと思います。


(2010年2月27日記載)