活字好きの本のお話

図書館や大好きな本の話、読んだ本の感想など、駄文で綴ってまいります。

いちごえほん


私の母は、毎月、子供である姉と私に、
伝記物のシリーズや、詩集などを買ってくれていました。
中でも私が大好きだったのは、『月刊いちごえほん』
キャラクターグッズ、今ではハロー・キティで有名な、
あのサンリオが出版していた月刊誌でした。


姉妹版として『詩とメルヘン』があり、こちらは姉が購読していました。
葉祥明のイラストが掲載されていたをよく覚えています。
『いちごえほん』は言わば、少し低年齢層向けで、
投稿されている詩の作者も、小学生・中学生が多かった気がします。


今では国民的キャラクターに成長した『アンパンマン』も、
実はこの『いちごえほん』に掲載されていました。
中央見開き2ページに陣取っていたのを覚えています。
あの頃、意地悪キャラはばいきんまんだけでした。
ドキンちゃんは、まだまだ後に登場する新しいキャラなんですね。
アニメのような丸々とした外見ではなく、
みんな少しシャープで荒削りな感じだったので、
子ども心に、「あんまり可愛くない」と思っていたものです。


文字を読むより、絵を見たり描いたりする方が好きだった私は、
挿し絵の可愛らしさ、美しさに魅入られていました。
イラストのコンテストも毎月開催され、
優秀作品は実際に挿し絵として採用されたりして、
絵を描くのが好きだった私からすると、
まさに羨望の的でした…


そんな私の記憶に留まらせてくれた1篇の詩がありました。
筋ジストロフィーという筋力が徐々に衰えて、
いずれは死を迎えるという難病に侵された小学生の詩…。
死を感じながら、それでも素直な気持ちで生きている姿が、
短い詩の中に綴られていて、心動かされました。
看護師だった母に、症状はどんなものなのか、
この子はどうなってしまうのか、と、何度も訊ねたものです。
挿し絵に描かれていた、物寂しそうな表情の子供の顔…
あの詩だけは、決して忘れられません。


今、あの子は…


恐らく天に召されてしまったのではないでしょうか…。
あの子が綴った1篇の詩は、
あの子の存在をほぼ永遠に示すものでした。
あぁいう詩にもう一度会いたい、そんな気が今でもします。
そして、そういう詩に巡り合わせてくれる本や雑誌にめぐり逢いたい。
子ども達にもそういう本達に出会って欲しいと思うのです。


『いちごえほん』は、そういう点で、優れた雑誌だったと思います。
休刊してしまったのが、とても残念です。


(2010年3月1日記載)