活字好きの本のお話

図書館や大好きな本の話、読んだ本の感想など、駄文で綴ってまいります。

何気ないようで、何気なくないのね。

この1週間、歯科で待ち、串カツ屋前で待ち、皮膚科で待ち・・・していたら、

あっという間にこれを読了してしまった。

 

私を変えた一言 (集英社文庫)

私を変えた一言 (集英社文庫)

 

感受性豊かな著者・原田氏の心のひだに触れた、

とびっきりの言葉達が集められていた。

原田氏が作家を志すにあたり、影響を受けた小説家達の言葉、

友人の哲学的な一言、今の時代の若者を鋭く指摘する一言や、

原田氏を日々追い詰める(!)言葉などなど、

そりゃぁ、色んなタイプの言葉が登場した。

 

その中でも興味を持ったのが、『御大切』という章。

 

海外からやってきた”love"という言葉を、一体どう訳すか?

この話は、ずっとずっと前、中学の時に、英語の先生から聞いた。

"love”が動詞として扱われる際、どう表現すべきか。

自分の感情を表に出す事を慎むように教育されていた日本人にとって、

こんなにあからさまに誰かを慕う思いを剥き出しにした言葉に、

適切に宛がう日本語を考えるのは、そりゃぁ、至難の業だったと思う。

英語の先生から聞いた話が正しいのかどうかは、未だ不明だが、

『貴方のためなら死んでもいい』とかなんとか訳したとのこと・・・。

その割には、海外ドラマじゃ、この"love"って単語を連呼してるわけで、

『何ぼ命があっても、身ぃ持たへんやん』なんて気持ちになる。

 

と、話が若干ずれたが、この『御大切』の章では、”愛”という言葉を考えている。

 

原田氏はこの”愛”という言葉を使う事に、激しく抵抗しているわけで、

私も、何となく理解を示す事が出来た。

私事ではあるが、”好き”と言われれば、”ほんと?”と返すが、

”愛してる”と言われると、”嘘やん”と返したくなる。

照れる気持ちもあるのだが、こんな言葉軽々しく口に出来る人なんて、

詐欺師くらいしか居ないだろ、って勝手に思っている。

先ほどの中学時代の話もあって、この”愛”って言葉には、

究極!とか、瀬戸際!とか、崖っぷち!とか、そういう時にしか使えない気がしてならない。

そう、軽々しく使える言葉じゃない気がするのだ。

 

嘗ての隠れ切支丹達が、この”love"の訳に『御大切』と言う言葉を宛がった・・・

 

神から授かる一番大切なもの・・・それが"love"。

だから大切の最上級、尊い気持ちを込めて『御』を付けたのだろうか・・・。

でも、日頃使っている何気ない言葉なのに、『御大切』となると、

やはり、居場所はそこら辺じゃなく、神棚の上、何て感じ。

しかし、実にいい響きだと思う、『おんたいせつ』って。

 

今じゃ普通に使っている”愛”って言葉。

この文字さえ見れば、『理解できてる』なんて思う人は多いだろう。

誰かの事を凄く好きに思う事? 無償で何かを捧げること?

いやいや、やっぱりその前に、相手を大事に思う事、でしょ。

そう考えると、切支丹の方々・・・ 有難う、って言いたい。

 

他にも興味をそそられる言葉が沢山あった。

全部が全部、心の鐘をガンガン鳴らすものではなかったが、

もしかすると、読み手によっては響き方も違うだろう。

結構気楽に読めて、それでいて身になる1冊だった。お奨めします。

 

で、『出口のない海』を読もうと思っていたが、

まだ心の準備が出来ていないのと、原田ワールドから抜け出したくない事から、

今はこれを開いている。

 

たまげた録 (講談社文庫)

たまげた録 (講談社文庫)

 

暫くは電車の中で顰蹙かいまくり、だ。