活字好きの本のお話

図書館や大好きな本の話、読んだ本の感想など、駄文で綴ってまいります。

現在通勤の電車内で、トマス・ハリスの『レッド・ドラゴン』を読んでいる。

連日の寝不足と、度の合ってない眼鏡のせいと、

凄惨な犯行現場の描写が拍車を掛けて、なかなか読み進んでいない。

しかし、ページを開けば必ず前に進める、と自分に言い聞かせて、

どんなにしんどくても、一応、膝の上で本を開くよう心掛けている。

 

今朝も寝不足、電車の横揺れが最高に気持ち良い。

でもやはりページを開いた。

少しずつページが繰られ、少しずつ読み進んでいく。

 

ふと、自分の左肩でパタパタと動くものがいることに気が付いた。

 

蛾だ!

 

やはり最初は驚いて、動揺して、戸惑った。

しかし、1.5cm程のその蛾は、自分の胸元の辺りをゆっくりと、

しかも細かく羽ばたきながら移動していった。

飛び立つ気は全く無いらしかった。

 

自分は、静かに手にとっていた文庫を置き、

胸元でじっとしている蛾を脅かさないように、息を殺した。

左隣の男性も、右隣の女子高生も、

自分の胸元で静かに佇んでいる蛾を見つめていた。

 

『さぁ、駅に着いたで。一緒に出よか。』

 

蛾は静かに止まったまま、自分と一緒に電車を降りた。

胸元をポンポンと叩くと、蛾はパタパタと羽を動かして飛んでいった…。

 

そういえば、トマス・ハリスの作品で、蛾が登場するものがある。

 

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

 

話の中で蛾はある意味キーワードだ。

これに出てくる蛾ほど大きくも、毒々しくもなかったが、

何か偶然みたいなものを感じた。

いつもならさっさと追い払うだけで済ませてしまうのに、

今日に限って怖くもなく、嫌悪感もなく、逆に愛おしく感じた。

 

近頃の自分の精神状態、かなり低迷している。

何か解決のキーワードでも連想させるつもりだったんだろうか?