蛾
現在通勤の電車内で、トマス・ハリスの『レッド・ドラゴン』を読んでいる。
連日の寝不足と、度の合ってない眼鏡のせいと、
凄惨な犯行現場の描写が拍車を掛けて、なかなか読み進んでいない。
しかし、ページを開けば必ず前に進める、と自分に言い聞かせて、
どんなにしんどくても、一応、膝の上で本を開くよう心掛けている。
今朝も寝不足、電車の横揺れが最高に気持ち良い。
でもやはりページを開いた。
少しずつページが繰られ、少しずつ読み進んでいく。
ふと、自分の左肩でパタパタと動くものがいることに気が付いた。
蛾だ!
やはり最初は驚いて、動揺して、戸惑った。
しかし、1.5cm程のその蛾は、自分の胸元の辺りをゆっくりと、
しかも細かく羽ばたきながら移動していった。
飛び立つ気は全く無いらしかった。
自分は、静かに手にとっていた文庫を置き、
胸元でじっとしている蛾を脅かさないように、息を殺した。
左隣の男性も、右隣の女子高生も、
自分の胸元で静かに佇んでいる蛾を見つめていた。
『さぁ、駅に着いたで。一緒に出よか。』
蛾は静かに止まったまま、自分と一緒に電車を降りた。
胸元をポンポンと叩くと、蛾はパタパタと羽を動かして飛んでいった…。
そういえば、トマス・ハリスの作品で、蛾が登場するものがある。
- 作者: トマスハリス,菊池光
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1989/09
- メディア: 文庫
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話の中で蛾はある意味キーワードだ。
これに出てくる蛾ほど大きくも、毒々しくもなかったが、
何か偶然みたいなものを感じた。
いつもならさっさと追い払うだけで済ませてしまうのに、
今日に限って怖くもなく、嫌悪感もなく、逆に愛おしく感じた。
近頃の自分の精神状態、かなり低迷している。
何か解決のキーワードでも連想させるつもりだったんだろうか?