活字好きの本のお話

図書館や大好きな本の話、読んだ本の感想など、駄文で綴ってまいります。

ポール・オースター


ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、


ポール・オースター


彼の作品、いつも最初はゴロゴロと坂道転落モードなのですが、
全くゼロになった状態から、何に価値を見出すか…
シチュエーションは異なっていても、
共通するテーマはそこにあるな、と読みながらいつも感じています。


そんな彼の作品のなかで、大好きなのは、


『最後の物たちの国で』
白水Uブックス


登場する殆どの人物、名前を持っていません。
主人公以外が、なんとなく消え行くもののよう…
そう、このお話は、段々とモノが目の前から消え去ってゆくお話。
モノだけでなく、人々の記憶も…
その記憶が失われないように、記されていく…
何かを伝えようと思うけれど、伝わる頃には、
記憶も自分自身も居ないだろう、
しかし、その虚しさを否定するように、
必死に何かを残そうとする主人公。


言葉って大切なのだ、
何かを伝えようという気持ちは大事なんだ。
今、色んなモノが溢れかえった時代に、
あえてこの全てのものが失われる状況を生み出す、
そんな彼の作風が、何となく衝撃的なんです。


話の展開はそんなにドラマチックじゃない、
でも読み終わって、その本を閉じたとき、
何故か心の中でジンワリと悲しさや刹那さ、
優しさや喜びと感じる事ができる。
本を閉じ、何もなくなったとき…
それでも残るのは、人間の感情で、
それを生み出すのは、こういった文字なんだなぁ…。
なんて思うわけです。


他にも彼の作品で秀作は沢山あります。
是非、手にとって見ていただきたい作者の1人です。


【送料無料】最後の物たちの国で [ ポール・オースター ]


(2010年3月21日記載)